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PL保険とは

PL保険とは 物販や工事・サービス業の方が対象となり、

引き渡し後の身体・財産事故を補償するものです。

internallink_icon_01.gif製造業、販売・卸売、飲食業の場合

貴社が製造・販売した財物(生産物)が他人に引き渡された後、

その生産物の欠陥により発生した偶然な事故により、他人の生命や 身体を害したり、他人の財物を損壊(滅失、破損、汚損もしくは紛失すること、または盗取されること)した場合に、 貴社が法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害に対して、

補償が受けられる保険です。

○保険の対象

食品・飲料品、電気器具、喫茶店・飲食店等で提供される飲食物、 スーパー・デパート等で販売する商品 など

○お支払いの対象となる事故例

・テレビが発火して家屋が焼失 ・ガス湯沸器の不完全燃焼により団地で集団一酸化炭素中毒が発生 ・電気カミソリを充電中、電気カミソリから漏電し火災が発生して近くの 壁が焼損したなど

 

internallink_icon_01.gif工事・サービス業等の場合

仕事が終了した後、その仕事の欠陥により発生した偶然な事故により、 他人の生命や身体を害したり、他人の財物を損壊(滅失、破損、汚損もしくは紛失すること、または盗取されること)した場合に、貴社が法律上の損害賠償責任を負担することにより被る損害に 対して、補償が受けられる保険です。

○保険の対象

工事等の請負業者の仕事の結果、機械類の設置・修理業者の仕事の結果、 清掃作業の結果等

○お支払いの対象となる事故例

・取り付けた看板がはずれ、通行人に当たりケガをさせてしまった。 ・スプリンクラー設置の欠陥により漏水が発生し、じゅうたんが水ぬれ ・電気工事の配線ミスにより漏電し、火災が発生して近くの壁が焼損したなど。

internallink_icon_01.gifここがキモ

importantinfo_icon_01.gif作業中の事故は補償されない

PL保険は引き渡し後を補償するものであり、作業中・サービス提供中に 発生した事故は対象外となります。 これらの事故をカバーしたい場合は、施設所有(管理)者賠償責任保険・請負業者賠償責任 保険を合わせて検討する必要があります。 またこれらの保険をセットで契約すると、保険料の割引が受けられることが あるので、セット契約とすることを検討材料の一つに入れるようにしてください。

importantinfo_icon_01.gif商品・サービス自体を補償する保険ではない

PL保険とは、あくまで拡大損害【対人・対物被害】を補償するもの であり、商品・サービス自体を補償するものではありません。

具体的な例を挙げれば、 製造業であれば、完成物自体の品質保証。 工事・サービス・仕事の結果であれば、施工したサービス自体の 品質等は補償対象とするものではありません。

これらの品質保証は一般的に「瑕疵保証」と呼ばれます。

販売製品の不良が発覚して、再度改良製品を新規に製造の上、 納品しなくてはならない。 外壁塗装工事を行ったが、引き渡し後、色むらが発生し、 塗りなおし工事を行わなくてはならない。 床張り工事を請け負い、完成後引き渡したが、数年後に反りが 発生し再施工を要求された。 等の例で、拡大損害が発生していないのであれば、品質保証の 範疇であり、PL保険では対象になりません。 ただし、「拡大損害が発生している」ことを条件に、生産物 自体の補償を対象とする特約も発売されています。

またリコール等に対する備えは、リコール費用補償特約やPL保険とは 別途に生産物品質保険などを手配する必要があります。

importantinfo_icon_01.gif保険の目的は有体物

物販の場合、あくまで有体物が対象となり、コンサルティングサービスや 建築設計・ソフト開発など無形サービスは対象となりません。  建築設計・ ソフト開発等に関しては、別途専用の保険の手配が必要となります。

importantinfo_icon_01.gif契約者に法律上の賠償責任が発生していること

PL保険は民法やPL法に則って設計されています。 保険が有責になるには、法律上の賠償責任が契約者に発生していることが 条件となります。 当然、不可抗力等、契約者に法律上の賠償責任が問われない場合は、 対象外となります。 PL法についてはこちら。

PL法について

internallink_icon_01.gif概要
「「製造物責任法」以下PL(product liability)とは、企業が製造した
製品の「欠陥」によって第三者の身体・財産に損害が発生した場合、その
損害に対して、賠償責任を負うことを言います。
商品(製造物)に欠陥(瑕疵)があるため、消費者、利用者等が損害を
被ったときに製造業者等に賠償責任を負わせようとするのが「製造物責任」
です。

現代社会では、各種の製品が大量に生産され、流通過程を経て、多くの
消費者に販売されていますが、PL事故が起こると、多数の被害者が広い
地域にわたって発生し、企業は巨額の損害賠償金の負担を強いられること
になります。

近年、消費者の食品・医薬品・家電製品等の安全性に対する関心が高く、
企業は安全で安心な製品を提供することが強く求められており、ひとたび
深刻なPL事故が発生すると、社会的責任が追及され、企業ブランドが
大きく低下します。

1995(平成7)年の製造物責任法(PL法)の施行によって、被害者の
製造業者に対する賠償請求が容易になり、さらに消費者意識の高まりに
よって、PL訴訟の件数は増加傾向にある等、PL事故は企業にとって
重大なリスクとなっています。

ここでは、この「製造物責任法」(以下PL(product liability))について
解説します。

internallink_icon_01.gif解説
PL法は、民法の不法行為の特別法として成立、全6条で構成され、企業
責任の厳格化という社会的動向の中で、製品の欠陥により他人の生命、身体、
財産を侵害した場合に製造業者等に責任を課す法理を採用したものです。

PL法では、製造業者等は、その引き渡した製造物の欠陥により、他人
の生命、身体または財産を侵害した時は、原則として、これによって生じ
た損害を賠償する責任を負うもの
としています。(PL法3条)
その損害が、不具合によるもの等、その製造物についてのみ生じた
場合には、債務不履行責任(民法415条)や売り主の瑕疵担保責任
(民法570条)の問題となり、PL法上の責任は生じません

(PL法3条ただし書)

民法の一般の不法行為責任(民法709条)における「過失責任」主義に
よれば、被害者が製造業者等の故意または過失の存在を立証しなければ
なりませんが、PL法では、被害者保護のために「欠陥責任」が採用さ
れています。

したがって、被害者は製造業者の過失を立証する必要はなく、 代わって
「製造物の欠陥」 を立証することで足りるようになり、単に次の事項
のみを証明すれば良いことになります。
・損害の発生
・当該製品の欠陥
・欠陥と損害との因果関係

また品質保証とPL法・PL保険の関係を明確化できないケースをよく見かけますが、
PL法・PL保険の対象とするものは、下記の拡大損害を指しています。
商品・サービス自体の品質を保証するものではないことを注意しましょう

internallink_icon_01.gif参考:製造物の欠陥による被害類型と法律関係
品質
損害
製造物の欠陥により商品価値が下がることによる損害(瑕疵損害) ・不完全履行による債務不履行責任(民法415条)
・売買契約の場合は売主の瑕疵担保責任(民法570条)
・欠陥住宅等請負契約の場合は、請負人の瑕疵担保責任(民法634条、住宅品質確保促進法94条等)
・不法行為責任(民法709条)など
拡大損害 製造物の欠陥により被害者の生命、身体または財産を侵害することによって生じる損害 製造物責任法(PL法)3条

relatedinfo_clauseicon_01.gif製造物責任法

(目的)
第一条 この法律は、製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

(定義)
第二条 この法律において「製造物」とは、製造又は加工された動産をいう。

2 この法律において「欠陥」とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。

3 この法律において「製造業者等」とは、次のいずれかに該当する者をいう。

一 当該製造物を業として製造、加工又は輸入した者(以上単に「製造業者」という。)

二 自ら当該製造物の製造業者として当該製造物にその氏名、商号、商標、その他の表示(以下「氏名等の表示」という。)をした者又は当該製造物にその製造業者と誤認させるような氏名等の表
示をした者。

三 前号に掲げる者のほか、当該製造物の製造、加工、輸入又は販売に係る形態その他の事情からみて、当該製造物にその実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者。

(製造物責任)
第三条 製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただしその損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。

(免責事由)
第四条 前条の場合において、製造業者等は、次の各号に掲げる事項を証明したときは、同条に規定する賠償の責めに任じない。

一 当該製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかったこと。
※いわゆる「開発危険の抗弁」と呼ばれるもので、ここでいう「水準」はその時点での入手可能な最高の水準とされています。

二 当該製造物が他の製造物の部品又は原材料として使用された場合において、その欠陥が専ら当該他の製造物の製造業者が行った設計に関する指示に従ったことにより生じ、かつ、その欠陥が生じたことにつき過失がないこと。
※部品・原材料メーカーが、これを証明することにより免責となった場合、通常、完成品メーカーがPL法上の責任を負うことになります。

(期間の制限)
第五条 第三条に規定する損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び賠償義務者を知った時から三年間行わないときは、時効によって消滅する。その製造業者等が当該製造物を引き渡した時から十年を経過したときも、同様とする。

2 前項後段の期間は、身体に蓄積した場合に人の健康を害することとなる物質による損害又は一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害については、その損害が生じた時から起算する。

(民法の適用)
第六条 製造物の欠陥による製造業者等の損害賠償の責任については、この法律の規定によるほか、民法(明治二十九年法律第八十九号)の規定による。

例えば、損害賠償の範囲(民法416条)、損害賠償の方法(民法417条)、共同不法行為者の責任(民法719条)等が挙げられます。
なお、不動産、未加工の一次産品による被害や販売業者の責任などPL法の対象とならない場合には、民法の債務不履行(民法415条)や不法行為(民法709条以下)等による責任の問題となります。

 

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主なポイント
①製造物(第2条)
「製造又は加工された動産」とされ、ほとんどすべての製品が対象となると考えられます。
対象外となるのは以下のとおりです。

対象外:未加工の農林水産物、不動産、サービス、無体物(ソフトウエアなど)

②欠陥(第2条)
本法において、「欠陥」とは、「通常有すべき安全性を欠いていること」と定義されています。
(欠陥の類型)

◆製造上の欠陥
⇒設計・仕様の通りに製造されなかったことをいい、
 免責事由がない限り、欠陥ありと判断されます。

◆設計上の欠陥
◆表示上の欠陥

⇒考慮すべき要素の例
・技術上の実現可能性
・被害者側の事情と予見可能性
・回避措置と危険の相関度

製造業者が自らの設計通りに製品を製造した場合において、事故が発生したとき、
製品の欠陥は、設計上または表示上の欠陥に分類されます。
この場合の欠陥の有無は、次のような事情を考慮して判断することが規定されています。

(考慮すべき事情)
・製造物の特性 (製造物の表示、製造物の効用・有用性、価格対効果、被害発生の
蓋然性とその程度、製造物の通常使用期間、耐用期間など)
・通常予見される使用形態 (対象となる使用者、使用状況など)
・製造物を引き渡した時期
・その他の当該製造物に係る事情 (行政上の安全基準、中古品、廃棄された製品など)、
欠陥の有無について、PL法は、その成立段階においては詳細な用件を定めず、
施行後の裁判事案の中で、裁判所の具体的な判断に委ねられることとしています。

③責任主体(第2条)
本法により無過失責任を負うこととなる「製造業者等」とは以下のとおりで、
一般に販売業者は責任主体とはなりません。
・製造、加工業者(部品製造者を含みます。)
・輸入業者
・表示製造業者(OEM(original equipment manufacturing)生産の場合のブランド表示者等)
・その他実質的な製造業者と認められる表示をした者(製品に総販売元と記載している
ような業者、プライベートブランド製品等で製造業者の表示がない場合等)

④製造物責任の要件(第3条)
製造者の過失ある「行為」ではなく、製品の「欠陥」という性状を責任要件とする
無過失責任法理を採用しています。
・製造業者等が製造、加工、輸入または氏名等の表示をした製造物について、
・その引き渡し時に欠陥があり、
・他人の生命、身体または財産に拡大損害を生じさせ、
・その欠陥と拡大損害の間に因果関係が存在すること。
⑤立証責任(第3条)
被害者側に、欠陥の存在、損害の発生、欠陥と損害の間の因果関係の立証責任があります。

⑥法定責任期間(第5条)
製造業者等は、被害者が損害および加害者を知った時から3年(身体の障害については
5年)、当該製造物を引き渡した時から10 年間、本法による責任を負います。
ただし、蓄積損害・潜伏損害については、当該製造物を引き渡した時からではなく、
損害が生じた時から10 年間となります。

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